今日はハロン湾でのツアーに参加する。
後ろの席はすでに埋まっていたので一番前の席に座った。
ぎゅうぎゅう詰めの車内、隣の席にはヨーロピアン風の小柄な女性が座っていた。
俺は警戒されないようにニコッと笑って「ハイ、ここに座っても大丈夫かな?」と聞いた。
彼女は必要最小限のスマイルで、どうぞ、と言ってくれた。
俺は座るなり彼女に「日本から来ましたアツシです」とあいさつをした。
「リジェーンよ、ベルギー人」
北欧の人はコミュニケーションも省エネなのか。
通路を挟んでのお隣はオランダ人女性の二人組。
ハロン湾まで数時間あるというので、僕はお絵かき帳を取り出して下書き段階の絵を仕上げることにした。
もちろん人前で絵を描くということには「関心を引いて友達を作る」という裏目的も併せ持つ。
作戦通り、リジェーンとオランダ人の二人も興味を持ってくれた。
絵のおかげで、その後のバスの時間はいろいろとお話ができて楽しいものになった。
もちろん人前で絵を描くということには「関心を引いて友達を作る」という裏目的も併せ持つ。
作戦通り、リジェーンとオランダ人の二人も興味を持ってくれた。
絵のおかげで、その後のバスの時間はいろいろとお話ができて楽しいものになった。
リジェーンは心理カウンセラーで、オランダ人の二人は大学の卒業旅行だった。
港について船に乗ると、さっそくランチが提供されて僕らは同じ席に座った。
船には世界中から集まった20人程の人々が乗っていた。
俺はリジェーンたちを含めた20~30代の若者たちと仲良くなって、そのあとのツアーを一緒に行動した。
船は海の上の名所をたどっていく。
まず、船はティエンクン鍾乳洞を訪れた。
大聖堂くらいの大きさの鍾乳洞がカラフルにライトアップされていて、それがなんとも残念なのだ。
俺たちは顔を合わせて「ライトアップしない方がいいのに、もったいないね」と意地悪に笑った。
せっかく洞内の自然の造形が美しく、何もしなくても岩肌のうねりがいい感じに心をかき乱してくれるのに、都市のネオンのような色使いで照らしているために、ちょっと下品になってしまっている、
ということで、世界の若い旅人たちの間では一致した。
次は、カヌーやボートで奇岩の中を進んでいくレジャー
岩のトンネルをくぐると、中は円形のホールのようになっていて、
鳥がさえずる声がいつまでも反響し続けていた。
一同、その非現実的な空間に胸を打たれていた。
続いてはボートピープルの集落
一通りのレジャーが終わると船はいかりをおろして停泊した。
みんな甲板に上がってきて思い思いくつろいでいる。
しばらくして、ぱっしゃーん、と誰かが海に飛び込んだ音が聞こえた。
アメリカから来ているジョージだった。
すぐに彼と一緒に旅をしているマークが飛び込んだ。
フランス人のロイと恋人でベトナム人のミーも続いた。
競うように僕も飛び込んだ。
ベルギー人のリジェーンがそれを見て我慢しきれなくなって水着に着替えて飛び込み、オランダ人の二人組は「もういいや!」と言って着ていた服のまま飛び込んだ。
水は思ったよりは冷たく、キレイではなかったが、みんなぶるぶる震えながらも6~7mの高さのある甲板から飛び込んだ。
最初心配そうに見ていた中年の韓国人夫婦も、笑い始めて、やがて旦那さんが何やら韓国語で叫びながら飛び込んだ。
そうこうしているうちに太陽が水平線にゆっくり落ちていく、水面に敷き詰められた光の粒。何度も見た光景でも、心を奪われる。
自然に甲板にいるみんなも静かになる。海風の匂いははほんのり塩っ辛い。
不思議な形の島や岩が一つずつ影になって、夜に溶けていく。
不思議な形の島や岩が一つずつ影になって、夜に溶けていく。
「Hey, ジャパニーズ・ギターマン、いつになったらショーを始めるんだ?」
海に真っ先に飛び込んだアメリカ人のジョージが声をかけてきた。
憎らしいほどのイケメンだ。
ジョージはめちゃくちゃイイ奴。
気遣いができて頭も切れる。
人間であればだれでも惚れるだろう。
完璧すぎるナイスガイなので、とんでもない欠点でもあってくれないと不公平だと思う。
リジェーンは若干恋に落ちかけていた。
ギターケースを開けて、ギターを取り出しチューニングする。
みんなが俺を見ている。
期待に輝く視線の中心で小さな優越感を感じる。
最初はこの沈黙をなめらかに破るとしよう。
"My Favorite Things" がいい。
それに続いて"Fly Me to the Moon"、マイケルジャクソンやビートルズ、ブラジルの音楽も歌った。
ある程度歌って、すっと音を止めてみる。
潮騒に包まれた。
ボコンと船腹に波がぶつかる音が響く。
ぼんやり座ってると船がゆったりと揺れているのに改めて気づく。
それに続いて"Fly Me to the Moon"、マイケルジャクソンやビートルズ、ブラジルの音楽も歌った。
ある程度歌って、すっと音を止めてみる。
潮騒に包まれた。
ボコンと船腹に波がぶつかる音が響く。
ぼんやり座ってると船がゆったりと揺れているのに改めて気づく。
みんな黙っている。
「もっと弾いててよ。すごく良い感じ」
声を発したのはオランダのリジェンだった。
彼女とは船内の部屋が一緒で、露骨にゲ~っていう顔をされたが、1日一緒に過ごして打ち解けてきた。
女性の一人旅で気を張っていたんだろう。
韓国人カップルは抱き合ったままこちらを見て、ニコッっとうなづいた。
フランス人のグレンと、ベトナム人のネリーは縁に寄りかかって数少ない星を見上げてる。
みんなそれぞれの言葉で語り合っていた。
僕は消灯の時間まで歌い続けた。
最後はルイ・アームストロングの「What a wonderful world」を選んだ。
左手が汗と潮でベタつく。
頭の中にはイントロのストリングスが響いている。
「I see trees of green, red roses too.... 」
フランス人のグレンと、ベトナム人のネリーは縁に寄りかかって数少ない星を見上げてる。
みんなそれぞれの言葉で語り合っていた。
僕は消灯の時間まで歌い続けた。
最後はルイ・アームストロングの「What a wonderful world」を選んだ。
左手が汗と潮でベタつく。
頭の中にはイントロのストリングスが響いている。
「I see trees of green, red roses too.... 」
歌詞は、世界中の美しいものを、窓辺にガラス細工を飾るみたいに、一つずつ心に置いていく。
歌い終わって僕はギターを置いた。
「みんなありがとう、一緒に旅ができて最高だった」と一日に感謝した。
「Yeah...」みんなにこやかにうなづく。
みんな国籍も人種も違う、いろんな歴史の子孫たち。
俺たちは一つの音楽にくるまって、船の上でこの素晴らしい世界に浮いている。
What a wonderful world.....
俺たちは一つの音楽にくるまって、船の上でこの素晴らしい世界に浮いている。
What a wonderful world.....
なんて素晴らしい世界なんだろう