2013年3月22日金曜日

タイ:カンチャナブリ 水上マーケット、死の鉄道、タイガーテンプル

朝7時、乗り合いのバンに乗って3時間、カンチャナブリという町にいく。
そこで「戦場に架ける橋」のモデルになった橋と、タイガー寺院と水上マーケットを見る。
ホテルまで俺を迎えにきたバンにはすでに8人が乗っていた。
日本人が俺ともう一人、ドイツ人が3人とあとはどこだったんだろうか。
前席にヒザを圧迫されながらの3時間はキツい。
車内は暑く、効かない冷房のために窓を閉め切っていて酸素が薄い。
これが移動、昼食、ツアー込みで1500円のパッケージだ。
でもいい。
この汗にまみれた感じ、旅を感じる。

(バンでの移動時間を使って絵を描く)





バスは最初、水上マーケットに着いた。
水上マーケットは英語でFloating Marketという。
「浮かぶ市場」という意味だ。
川沿いの高床式の家に住む人々が、ボートで商売をする。
そのゆったりとした風景に、忙しい国の観光客の心は安らぐ。
水は濁っているけどそれすらアジがあっていい。
俺はせっかくなので水上屋台で朝飯を食った。
平凡な味でも、この特別な状況が格別だ。
ウキウキする。

飯を食いおわると川沿いの道を歩く。
長い。ずっと向こうまで船の露天が続いている。
船上から、商売人が威勢良く観光客を呼ぶ。
橋の上からスケッチをした。
しかし無数にあるボートを書き留めるのは俺には難しい。
紙を何枚も無駄にしてようやくいい構図ができた。
遠近法を使って、視界の奥まで船と人で埋め尽くされた空間を表現する。
しかし、船の上の品物をかき込む時間はなかった。





バンは再び人をつめ込んで次に向かう。
泰緬鉄道。
「戦場に架ける橋」のモデルになった場所だ。
英名では「Death Railway」として知られる。
第二次世界大戦中、日本軍は捕虜や労働者に過酷な労働を強いて、タイからミャンマーまでの線路を敷いた。この鉄道建設は作戦上大きな成果をもたらしたけど、数十万人の欧米人捕虜を始めとする労働者を使い。過酷な労働で10万人以上が命を落とした。
線路の脇には餓死または過労死した労働者の死体の山が築かれたという。
それでDeath Railway、死の鉄道と呼ばれている。
この線路の近くの博物館では当時を再現した等身大のジオラマや、鉄道建設に使用された工具が展示されていて、その凄惨な歴史に触れることが出来る。
文字で綴られた教科書の中の戦争が、現実味を帯びて目の前に現れる。
人間は過去の過ちを時間の経過の中で少しずつ美化していく。
決して光り輝く段階に達することはなくても、角は削られ、丸くなっていく。
そうして次の世代では別の形になる。
もしかすると、戦争の歴史は、あえて傷をむき出しにしておくべきなのかもしれない。
ジオラマの人形の表情が当時を露骨に語る。







このツアーに参加していたJanaというドイツ人女性と仲良くなった。
彼女はイギリスに長いこと住んでいるので、英語がめちゃくちゃうまい。
うますぎて早すぎて聞き取れないことがある。
彼女も一人で旅をしている。
次に行ったタイガーテンプルはJanaと一緒に歩いた。

タイガーテンプルとは虎と僧侶が一緒に暮らす寺院だ。
猛獣と人間の共生は、密猟によって孤児になった虎の赤ちゃんを近隣住民が持ち込んだことに始まる。今では何世帯もの虎家族がここで暮らしている。
虎に触るのに1800円を払うんだけど、虎は毎日数羽の鳥を食うというので、エサ代と思うと妥当だ。

虎が人間と暮らすなんて最初信じられなかったけど、虎の行儀がいい。
実際近づくとなると、安全上、虎の正面には立つなとか、虎よりも低い姿勢になるな、とかあるけれど、虎は人間に慣れていて、人のスキンシップを警戒しない。
でもたまに吠える。
その度に俺はビクつく。
一緒にいるJanaは「こんなの大きなネコよ」といって、虎のお腹をくすぐっている。
そう言われると大きなネコに見えてくるけど、笑う「大きなネコ」の牙を見るとやっぱり虎だ。
それでもJanaは大きなネコと戯れている。
俺には虎も、ある意味Janaもこわかった。
タイガーテンプルには虎の他にも水牛やらチーターやらいろんな動物がいる。
サファリパークのような広い土地で、こうした動物に触れながら散歩が出来る。
さすがに大きな虎は鎖で地面に繋がれているけど、僧侶が鎖で虎と散歩をしているのを見たりできる。
あっというまに時間が過ぎた。





タイガーテンプルを出ると、俺たちを乗せたバンは帰路についた。
また3時間、ヒザがつぶれるような狭い車内に閉じ込められる。
俺は最後部座席に座っている。
横にはJanaがいてその奥にはまたまたドイツ人女性が座っている。
彼女も英語が達者で、俺に気を使って二人は英語で話してくれた。
しかし申し訳ないことに彼女たちの英語が高度すぎて、また車外のノイズが邪魔をして聞き取れない。
俺はしばらくすると疲れて眠ってしまった。
すると彼女たちはドイツ語で話し始める。
すごい。この言葉の切り替え、どっちがファースト・ランゲージか分からないくらいだ。

しばらくすると二人が興奮したように話すのが聞こえて目が覚めた。
Janaは俺が起きたのに気づくと
「Hey Atsushi ! Let's go to Ping-Pong Show tonight !」
ピンポンショー?
何だそりゃ?

つづく











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