前回の最後に英語について触れた。
俺の英語ってToeicで450点くらい。
中学英語は完璧じゃない。
これでも十分旅ができてる。
英語でも早口の人や、なまりが強い人もいるから、うまく聞き取れないこともあるけど、どこかに出かけるのも困らないし、現地の情報収集もできる、そして旅の間に少し上達して外国人の友だちもできてきた。
英語が上手なのに越したことないけど、言語習得は上を見たらきりがない。
もしも言葉がネックで冒険できないなら、時間がもったいない。
秋葉原で5000円の中古電子辞書を買って旅に出よう。
さて、バスに乗ってUbudに着いた。
文化と自然が共存する素晴らしい町と元カノは言ってたけど、
最初の印象は全然違った。
確かに歴史を感じる建築物が多く立ち並び、植物も南国特有の鮮やかさがある。
何がイメージと違ったか。
ここも客引きが多い。
バリのGDPの3分の2が観光関連の収入だ。
当然、クタやUbudといった観光地で客の争奪が激化する。
通りの土産物屋、バイクタクシーが通りをいく外国人に片っ端から声をかける。
土産物屋に並ぶ商品に値札はない。
中には正直な商売をしている人もいるけど、ふっかけられやしないか心配でなかなか手を出せない。
頭にかごを載せて布を売り歩くおばちゃんがいる。日本人女子大生が珍しがって写真を撮らせてくれと頼む。おばちゃんはにっこり笑ってポーズをとる。女子大生がシャッターを押すと、おばちゃんは女子大生の腕に布を載せ、布を買ってくれとせがむ。女子大生はバツが悪そうな顔で、聞こえない振りをして歩いていった。おばちゃんはあとを付いていく。
こんな光景を目にする。
俺もいいものは欲しいと思っているし、相応のお金も出すつもりではいるけれど、相場が分からないものには手を出せない。そこに客引きがいくら安いと言ってきても、こちらは警戒心を強めるだけ。
だけどそんな勧誘の波状攻撃に対しても、無視は良くない。フレンドリーにいこう。
それがきっとHappinessを俺にもたらす。
そうはいいつつ、18kgの荷物を背負って歩いていると次第に疲れて、正常な判断ができなくなってきた。そしてついに荷物を降ろしたくて適当なホテルに飛び込んでしまった。道で声をかけてきたバイクタクシーの運ちゃんに言われるまま付いていってしまったのだ。自宅を改装してホテルにしたからウチに来いという。その金額が予算内だったので、とりあえず見にいった。部屋は改装したばかりできれいだった。まあいいやとそこに決めると、元の金額に消費税10パーセントを要求してきた。1000円の10%だからたったの100円なんだけど、最初に言われるのと言われないのでは違う。それだけで信用は少し揺らいでしまう。
まあいい。学んだ。授業料だ。
気を取り直して町を歩く。腹が減った。
脳みそに糖分が欲しい。
クタやUbudには、おしゃれなレストランやカフェがたくさんある。そういうカフェが日本の3分の1くらいの価格で楽しめる。
例えばそういうおっしゃれ〜なカフェで食事をすると、メインと副菜とフレッシュジュースを頼んだとしても600円くらい。
でも、もっと安くておしゃれなところもあるので、カフェ巡りで一日過ごしても楽しいだろう。
でも、俺が探しているのはそんなおしゃれなところじゃなくて、地元の人が行くようなレストラン。
だから、一応300円程度を一食の予算で考えている。
そうするとなかなか見つからない。
結界を張られたみたいにメインストリートのカフェやレストランは入れない。
腹減った。
そんな風に町をふらふら歩いていると、おでこに冷たいものを感じた。
雨だ。
雨は最初ぽつぽつと、次第に強くなる。
最後にはもの凄い音をたてて降り出した。
あっという間に深い水たまりができる。
バイクや車は水の翼を広げて通り過ぎていく。
すげぇ。これがインドネシアだ。
あんな雨一度も見たことがない。
空はよくもこんなに泣けるもんだ。
雨に触ってみる。水は温かい。
日本の夏に降る雨みたいだ。
雨宿りをした。
近くにあったガードマンの待機小屋に入り込んだ。
そこにいたバリの民族衣装を着た兄ちゃんがいた。
今がチャンスとばかりにレストランを聞く。
お互いカタコトの英語だけど話が弾み、あれこれ聞きまくった。
彼は一つ一つ丁寧に説明してくれた。
ここの段々畑がきれいだとか、本当にお勧めのスポットはどこだとか、地元人のみ知る温泉や民芸品の工房、そしてどの地域に足を運べばぼったくりにあわずに買い物ができるかまで。バリのヒンドゥ教についても話してくれた。
雨がやむと、飯を食った。
兄ちゃんおすすめの地元の人もよく行くところ。
安くてうまい。たらふく食って180円。
これが俺が旅に求める味なんだ。
ナシゴレンをかき込みながら、明日の作戦を練った。
明日、バイクを借りよう。
山を見に行こう。
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